いち

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 彼女はいつものように、背に生えた小さな黒い翼を広げます。  空に飛び立つ準備をするのです。  彼女にとっては、地上を移動するより、空を飛ぶほうがだいぶ楽です。  翼は心もとない大きさですが、直接これを使って飛ぶわけではありません。この行為は彼女にとって儀式のようなものなのです。  そして、いつものように地面を蹴りました。  同時に、魔法を発動させます。  身体がふわりとしたものに包まれた感覚を経て、彼女は重力という鎖から解き放たれました。  少女の名前はリース・ディルート。  小柄な身体を飾る陶器のような白い肌に、さらさらとした黒い長髪。お人形のように整った可愛らしい顔立ちは、赤い瞳によって彩りを与えられます。つり気味の目はそんな顔立ちに釣り合いませんが、不思議とこの子には似合うのです。  背中に生えた翼を除けば、見かけは普通の人間と一緒です。  彼女ら有翼人種には、鳥が持つような翼が生えています。  色は二種類、白と黒があります。それぞれの色を持つ種族は争うことこそありませんが、あまり関わりを持つこともありません。  リースの住む地域では黒い翼を持つ人が多く住んでいます。彼女とて例外ではありません。悪いやつだとか堕天だとか死期が近づいているとか、そんなのはありません。  有翼人種は魔法を使うことも許されています。  魔法というのは我々の想像する、静電気を起こしたり、ラベンダーの香りを出したり、というもので間違いありません。  もちろん、炎や氷に雷を出したりすることも出来ます。  この魔法を利用できるのは、リースのような有翼人種だけであり、なおかつ若者かそれより若い子どもくらいのものなのです。  ☆
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