いち

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 たどり着いた場所は、この村唯一の図書館。  村立なので、街に建てられているものと比べると小さいです。  リースは自由意志で学校へ行くことを拒否しているため、ここが彼女にとっての学校代わりでもあるのでした。  見栄を張っているのか、外装だけは立派なドアを開けて、中へと入ります。  いつものことですが、図書館の中は閑散としていました。  いるのは暇そうな人が一人か二人ほど。  リースは普段通り、返本の手続きをし、新しい本を借りるために奥の方の区画へ向かいました。 (……うん?)  と、いつもと違う光景を目にしました。  図書館の奥まったところにある扉。  普段は閉じられているそこが、開いているのです。  そこはいわゆる閉架書庫で、関係者以外は立入禁止という場所でした。 (……どんな本があるんだろう……)  ここでリースの好奇心がうずきます。  というわけで彼女は好奇心に導かれるままに足を踏み入れました。  中は薄暗く、かびたようなにおいが充満しています。  そこは外から見た大きさよりも広く感じられました。魔法で空間を操作しているのでしょう。  最近、魔法を抽出する技術が進んでいると聞いています。その恩恵がこんな村に来ていてもおかしくはありません。  リースは適当な本を取ってみます。  部屋の中は暗いためよく見えませんが、初歩中の初歩である小さな光を出す魔法を使うことによって、ようやく見ることができました。  それが何であるかを判別すると、たちまち彼女は表情に乏しいといえどあからさまに不機嫌な顔になり、すぐ本を戻してしまいました。 (バカみたい……)  どうやら扇情的な内容だったようです。  何故こんなところにあるかは分かりませんが、リースの肌には合わなかったようです。  気分を盛り下げられた所で帰ろうかと思いきや、今度はすぐ側に妙な本を見つけました。
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