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さて、リースは家に着きました。
(……ふぅ)
家にまだ誰も戻って来ていません。
大嫌いな同居人と顔を合わせる必要がないことに安心し、リースは自室へそそくさと引きこもりました。
リースは親戚の家で慎ましやかに暮らしています。
何故かというと、既に彼女の両親は死んでしまっているからなのです。
たった数年前、幸せでいっぱいだった小さな頃のことです。
家に帰ったら、両親は殺されていました。
犯人は捕まっていないので、怨恨か、物盗りか、はたまた只の通り魔なのか、未だに分かりません。
しかし、幼き少女が一人で生きていけるはずがありません。
彼女は遠縁の親戚の家に預けられることとなりました。
その親戚が酷いもので、まずはじめにリースの家の財産を根こそぎ持って行き、妻・夫とも博打好きの無職で、その上、何かある度にリースに暴行を加えるのです。
元々引っ込み思案だったリースは更に引っ込み思案になり、しまいにはその暗さで学校でもいじめられるようになってしまいました。
だから彼女は通学を拒否しているのです。
物置だったその部屋は結構狭い上に、妙なガラクタだらけです。
何か作業をするのには便利なのかもしれませんが、彼女はそんなものと縁はありません。
殺風景な部屋を気にすることもなく、リースは鼻歌混じりに粗末な寝床の上へとちょこんと座ります。
(不思議な本……)
リースの中はどきどきとわくわくでいっぱいです。
その気持ちを溶かさないまま、興味をひいて離さないそれをじっくりと眺めてみます。
古い本のわりに装丁はしっかりしており、どうにか胸に抱えられるくらいの大きさです。その厚さと来たら、殴られたらひとたまりもなさそうなくらいです。
表紙には何か書いてありますが、ずっと昔の言葉で書いてあるため、リースには読めません。
こんな希少価値の高そうな本がどうしてあの図書館に置いてあったのか、少しは気になりますが、いまさら理由を知ることは出来ません。
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