いち

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(もしかしたら、昔の魔法に関するもの?)  彼女はさっそく中身を見てみることにしました。  普段の行いと何ら変わらず、厚い表紙を開くのです。  するとどうでしょう、 『アナタこそはそう! この世界の救世主! 大きな鎌を振りかざして怪獣をバッタバッタとなぎ倒す! 正義の味方――タダノイイヒト――!』  そんな文言が頭の中に響いてきました。  リースは大慌てで本を閉じます。  しかし、「声」はやみません。 『何を迷っているの! 善は急げと言うわ! 早く行くの! さぁ! さぁ!! さぁ!!!』  拒否をしても許されず、彼女は本からの光に包まれあっという間に成長――  という夢を見ました。 「……ん」  朝の光が少女を包み込みます。  目をぱちぱちとまばたきさせ、ゆっくりと起き上がったリースは、ぐーっと延びをします。  彼女は窓の方を見ましたが、今日はなんだか鳥の声が聞こえないので習慣的に行っていることは中止しました。  例の本は彼女のすぐそば。いざ読んでみようとしたら眠気が訪れ、すぐにばたんきゅーしてしまったようです。  彼女は例の本をじっと見つめてから、意を決してめくってみることにしました。   変な「声」は聞こえませんでした。  中にはよくわからない文字の羅列が並んでいます。  解読の手法を彼女は考えます。 (……図書館はしばらく行きたくない。なら……図書室しかないか)  リースは辞書を探すため、行きたくもない学校へ行くための準備をします。  いかにも田舎の学校臭い制服を着たリースは、使用期間の割りにぼろぼろな教科書と共に、黒い本も鞄に入れました。  ☆
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