第1章

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内線を無視してから数日が過ぎようとしていた。あれからも、青に黒だけが光を増している。そんな疑問すら、どうしてなんだろ ?なぜなんだろ?と思うことは気持ちあったが、深入りはしなかった。深入りするのが怖かったから、意味を知るのが怖かったから……今まで何も感じなかったことが当たり前だと思ったからた。 ふっと思えば2ヶ月前になっている。両手で数えたら2ヶ月ここに居ることになる、早いのか遅いのかわからない。 それと食堂に行ってもおばあちゃんは「いっくん」と呼んでは「いつもの?」とゲラゲラ笑って勝手に準備するようになった。コロッケ定食を作りながら大声で「一番くんの一を取って「いっくん」って呼んでいくからね。「いっくん!!」よろしくね!」と優しく言った。 大迷惑だよおばあちゃん、大声で優しく言うのは反則中で大犯罪だ。僕に優しくしないで、求めてしまうから。優しくしないで……。 工場長も周りも「いっくんさん」「いっくん」「いっさん」と勝手に呼ぶようになった。 うんざりだと思う反面、名前がある間違われないとも認識を改めてするようになった。当たり前のことが当たり前と思うことが、時に嫌になる。 感じてることが勘違いだってこともわかってる。今だって耳をふさぎたい、声なんてしらない方がよかった。感情が言葉で表現出来ることもしらない方がよかった。
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