第1章

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しばらくして部屋の灯りが消えた。ランプの柔らかいオレンジの灯りがが浮かび上がる。ランプの灯りでゆっくりと影が伸びる、その横顔は工場長のものだ。 煙草をくわえ、フゥーと煙を吐き出す「私の名前はどこにあるのだろうか……」と寂しく呟くと最後まで煙草を吹かし消した。 本棚から一冊のアルバムを取りにたつ。 それはこの工場を去って行った者との栄光の思い出。去ったものは笑顔で笑い、私は仮面の中で悲しく笑っている。 本当の私はどこに置き去りにしてきたのかわからない、探すべきなのか迷った時、社長から『そうだ、工場長になってみないか?』と誘いを受けた。迷った末【答が見つかるなら構わないよ】と返したのを今でも覚えている。 目頭が熱くなってきた。緩む涙腺を指で押さえ、深いため息をついたあと椅子に戻った。 どうしてあの一言で、答が出ると思ったんだろか。今も答が出ないままなのに、「いっくん」を見ていると寂しくて愛しく想う気持ちが沸いてくるんだ。胸騒ぎと言うのか、ほっといて置けないのかかわらないが今にも壊れそうな感じがして。 アルバムを開くと、誇らしく笑う顔が私の心がホッとするのを何度も感じている。 「いっくん」の笑顔をみたい、今はそれだけが唯一の私の望み。その望みのために出来ることを探していこうか?私に何が出来るのだろうか。 そうだ、「いっくん」が去る前に私の名前を付けてもらうのもいいだろ。そう思うと愛しさが滲み出そうだ。 工場長は溢れんばかりの笑みを浮かべた。
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