第1章

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何ヵ月ぶりだろうか?いや、何年ぶりだろうか?「空」に違和感を感じ始めたのは、四季と共に移り行く雲の表情。色鮮やかに変わる姿が人の移ろいを表しているのだろうと思うときもあった。 風が運んでくるのは、感情を揺さぶる波。白い贈り物に、寒さに凍えるときもあれば、日照りにより、居心地の悪さ暑さにうなだれる、柔なかな心地よさに甘い香りを漂わせ、枚散る葉に想いを寄せて切なさを感じる。 さて、今日はどんな「空」なんだろうと思うことが今日まで忘れていた。「いっくん」君はどんな「空」みたら感動するのだろ。私は紅く染まる「空」が今は好きなんだ。きっと、「哀しい」と私が思っているからだと、最近気がつき始めたんだ。 今までは、皆が笑うから私も笑う。だか、皆が居なくなれば寂しさが勝り、影を落としたように寂しくなる。 どんな宝物でも無くなれば哀しい。思い出にすれば時に嬉しくて、時に悲しくもなる。誰かの笑顔がみたい、ただそれだけでも、重要なことなんだと感じるのも悪くない。 今は食堂に「いっくん」が戻り、おばちゃんが笑顔になって以前の明るさに戻ることを願うことが優先だ。 外ではどんなことをしているのだろうか、心のままに感じるままに、今日という日を忘れないために、思う存分楽しめたらいい。 私も今日を楽しもうと思う。まずはティータイムとしようか。 工場長は弾む心を踊らせならがティールームへ足早に向かった。
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