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またね。
僕は、花束を棺桶にいれ、涙を拭きながら、「またね。」と呟いた。
僕の飼っていた犬、ジローは安らかな表情を浮かべたまま、出棺の時を待っている。
〝ジロー……。
ありがとう。〟
辛さのあまり、ジローから目を背け、他にも色々言いたい事はあったのに、またね。以外の言葉出てこなかった。
〝またね。正樹君。〟
聞き覚えの無い女性の声が脳裏に響いた。
「!?
ジロー!ジローなの!?
どこ!?」
十数年たった今でも不思議な現象だったと思う。
死を前にしてなお、またねと言う言葉が出てしまうあたり、ジローの死を受け入れる事が出来ていなかった俺の幻聴だったのか
それとも、また、生まれ変わり出会える事の予兆なのか。
今となって見ればわからない事だらけだ。
「ジロー。」
俺は、ジローの写真を眺めながらそう呟く。
「ひゃう!?」
「!?」
すると振り返れば、そこには恍惚な表情の彼女がその場にへたり込んでいた。
「先輩のエッチ……」
「ごめん!咲夜!
いるとは思ってなかった。」
「もう……仕方ない先輩ですね。」
と、咲夜はゆっくりと立ち上がり、俺の肩から顔出し、写真を眺める。
「先輩の飼っていた犬ですね。」
「そうだよ。思い出していたんだ。」
「私、この写真好きですよ。」
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