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職員が全員そろい、人数確認が済んで、バスはゆっくりと発車した。
「観念しろ菅谷。たまには俺の言う事聞け。」
「信じられない…。」
愛美は膨れっ面で窓の方を向いた。
(これ、一体なんなの…?)
職員たちは、一番後ろの席の二人の事など気にも留めていない様子で、お菓子を食べたりおしゃべりをしたり、楽しそうにはしゃいでいる。
愛美が窓の外を眺めているうちに、さっきまで同じ一番後ろの座席で、緒川支部長の向こうに座っていた竹山さんと赤木さん、その前の座席に座っていたみんなも、前の方の座席に移ってしまったようだ。
気のせいか、おしゃべりに夢中なオバサマたちが前の方の席に固まっていて、後ろの方に座っているのは自分たちだけのような気がした。
(何か美味しいお菓子でも食べてるのかも。ちょっと静かでいいか。って言うか…わざわざ席を変わらなくても、いっぱい空いてたんじゃないの?)
緒川支部長と愛美を一番後ろの席で二人きりにさせたのは、実はオバサマたちの緒川支部長に対するお節介だ。
“この旅行で緒川支部長が、片想いの菅谷さんに少しでも近付けるように”というのが狙いらしい。
二人が付き合っている事を知っている峰岸主管と高瀬FPも、素知らぬ顔でその話に乗った。
もちろん、緒川支部長と愛美の二人はまったく気付いていない。
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