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緒川支部長は小さく笑って、誰にも気付かれないように、窓の外ばかり見ている愛美の手をそっと握った。
「……っ!!」
愛美が驚いて振り返る。
「しーっ。」
緒川支部長は声には出さずそう言って、人差し指で唇を押さえた。
「少しだけ。」
「え?」
愛美が尋ね返す暇もなく、緒川支部長は身を乗り出して、愛美の視野を遮った。
そして素早く唇にキスをした。
緒川支部長はあっという間に唇を離して、座席の背もたれに身を預けている。
愛美は真っ赤な顔をして、窓の方を向いた。
(しっ…信じられない!!みんなもいるのに!こんなところで!政弘さんのバカ!!)
隣に座っているのは上司の緒川支部長のはずなのに、今だけは大好きな“政弘さん”に変わってしまったようだと愛美はうろたえる。
いつもはスーツを着て仏頂面をしている緒川支部長が、今日はいつもより少しカジュアルな服装で、ほんの少し穏やかな顔をしている。
それだけでも雰囲気がかなり違って、愛美としては、少し調子が狂ってしまう。
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