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2月の終わり。
ある保険会社の支部では事務員の女性がパソコンに向かい、猛スピードでキーボードを叩いている。
内勤職員の菅谷 愛美(スガヤ マナミ)。
入社5年目、この支部に配属になって7ヶ月。
来月、27歳の誕生日を迎える。
2月は保険会社にとって保険契約の増産月だ。
営業職員たちは通常月の3倍ほどのノルマが課され、目標契約件数と売上額を達成するために奔走する。
内勤事務員の愛美は、営業職員たちが成果を挙げるほど、その契約のデータ処理に追われ忙しくなる。
今月分の契約の最終締め切りの今日、彼女のデスクには、滑り込みで契約を取った営業職員から受け取った書類が山のように積まれている。
(あーもう!!なんでこんなギリギリになってから頑張るんだ!!取れる契約ならもっと早く取っとけ!!)
最終締め切り日なのだから仕方ないと言えば仕方ないのだが、通常月と違って増産月ともなると、その仕事量は尋常ではない。
心の中では毒を吐きながらも、社内では“仕事が速い上に明るく優しい内勤さん”で通っている愛美は、極限に達しそうなイライラを顔に出さないようにしながら入力作業を進めた。
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