可愛い幼馴染

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僕には、幼馴染が居た。 とても病弱で、人形のように透き通った肌、それでいて、どこか寂しそうな表情を時々する。けれど、彼女は強かった。 体が弱い分、心が強かったんだ。弱虫な僕を、何度も彼女は助けてくれた。 体が弱いくせに、僕を庇った。 高校生になった僕は、今まで友達が作れなかったくせに、出来たんだ。そのせいで、彼女との交流も無くなっていった。 そんなある日の事、僕は学校からの帰り道、一人で家路を歩いていた。駅へと向かっていたのだ。 駅前に、彼女が居た。僕の、幼馴染の、病弱な彼女だ。 僕は声をかけようと心掛けた。けれど、なかなか思う事が口が乾き、発せられない。 彼女は僕に気が付いた。僕に近づいてきて、笑う。 「ふふっ、久しぶりだねぇ――君!会いたかったよ!」 彼女はそう言った。僕も戸惑いつつも「僕も、会いたかったよ」そう言った。 彼女は僕の手を握り、駅へと歩く。 「一緒に帰ろっ、良いでしょ?駄目、かな」 伏目がちに彼女は聞いてくるもんだから、少しう、となった。が、やむなく承諾。 彼女は迚喜んでくれた。 いつも乗る電車を待つ。 彼女はまだ僕の手を握りしめたまま、にこにことしながら僕の左隣に立っていた。 ――手が迚冷たい……。 心配になるほど、彼女の手は冷たかった。まるで、氷の様に。 不思議にも思ったが、彼女は嬉しそうに笑顔なので何も言わないでおくことにした。 何分か経った。 けれど、一向に電車が来ない。すると、彼女は握りしめていた手を放した。 何事かと思った。 彼女は僕の目の前に立つ。 すると、また笑顔で僕の事を見上げる。 「またね、―――君」 彼女はそう言って、後ろにとんだ。すると、何分か経っても来なかった電車がいきなり出て来て、彼女を、ふっ飛ばした。  * あれから何年か月日が経った。 僕は相変わらず彼女の墓の前で泣きじゃくった。良い大人が、墓の前で、別に付き合ってもなかった只の幼馴染の墓の前で、ずっと、ずっと泣いて、ずっと、ずっと墓の前に居た。
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