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ボールが跳ねる音
フロアとシューズが擦れる音
チーム同士の声の掛け合い
僕はそれをどこか遠くに感じながらコートの反対側へ目を向けている。
パサッと気持ちいい音をたてながらボールがリングに吸い込まれたようだ。
「どうした? ずっと恐い顔して」
点数板の反対側から不思議そうな顔した涼風が顔を出す。
「あ、うん。ごめん」
慌てて二点プラスしてまた僕はコートに目を向ける。ゲームをしているクラスメイトを通り越し反対側のグループ。少し騒がしく、少し大人びて、少し恐い、そんな近寄りがたい6人組。
「なんかさ……、僕達つい数か月前まで中学生だったよね?」
僕の視線の先を追いかけて涼風も反対側の集団を見る。
「あのグループとなんかあった?」
「前回の体育の時、あのグループの一人と同じチームになったんだけど・・・」
3組と7組の体育は合同で行われている。今月はバスケとサッカーに別れて選択授業になった。体育館組は背の順で適当にチームが決まりそのまま一ヶ月変わることはないらしい。
先週チーム分け後のゲーム中に初めて会話をした。
「アイツに下手くそって真顔で言われたんだよね。派手で物事はっきり言って僕と全然違う……」
涼風は少し視線を天井へ向け思い出したように笑った。
「いや、あれはお前がアイツのパス顔面でキャッチするからだろ。しかも綺麗に当たったな」
あまり球技が得意ではない僕は、呼ばれて振り返った時パスされたボールの速さについていけず顔面キャッチしてしまった。
一瞬静まり返ったコートの中で恥ずかしく声も出ず硬直する僕を見てアイツは吹き出し、それが引き金となって皆に笑われてしまった。ゲームが終わってから "下手くそだな" と止めを刺さすアイツに言い返すこともできない情けない僕。
「パスがいきなりすぎだったんだよ……。だいたい普通はまず謝るだろ?」
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