1

4/34
前へ
/282ページ
次へ
 あまりキョロキョロしなくてもゲーム中に呼ばれる方を向けばボールが僕の手元に飛んできて、パスをしなくても手元のボールは手渡すように移動し、ゴールへと運ばれる。  点を取り取られゴールの度にハイタッチしてゲームが終わった。 「なんとか勝てたな」  汗を拭いながら声を掛けてくる。 「僕はなにもしていないよ。悪かったな足引っ張って」  顔を反らし自分でも驚くほどとても嫌な言い方ができてしまう。先週も今週もこんな僕によくも話し掛けるな、なんて思いながらチラリと横に立つアキ君を盗み見る。 「足なんて引っ張ってねーよ?」  また不思議そうな顔するからもっと嫌な言い方になる。 「合わせさせてただろ!」  本心ではきっと迷惑に思ってるはずだ自分でも下手くそだって分かってる。だからこそなんでそんな事言わせるのかと余計イライラする。 「チームプレイってそういうものだろ? 気にすんなよ」  また肩を叩き笑って行ってしまった。  そういうものって、どういうものだ?  壁に凭れ涼風のゲームを見つめる。爽やかで優しくて皆に好かれる一番の友達はバスケも上手だ。  涼風は速いパスでゴール下にいるチームメイトへボールを渡しゴールを促す。受け取った相手は振り返りシュートするが外し、溢れたボールを涼風が拾いもう一度チャンスを作る。パスを受けた人は次こそシュートが決まった。  涼風が僕へ視線を向けるから笑顔でナイスアシストって応える。  あぁ、チームプレイってこういうものだ……  先刻の言葉を思い出しコートの反対側を見るとアキ君と目が合った。  なっ? って口パクで伝えてきているのかもしれない。でも目と目で会話できる仲じゃないから首を傾げアキ君の笑顔から逃げた。
/282ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加