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昼休みに涼風と悠紀人と三人で弁当を食べていると廊下をアキ君が通った。
自然と視線が交わる
ただ動くものに何となく目を向けただけ…… そうしたら、たまたま目が合っただけ。
一瞬、柔らかな眼差しに胸の奥がざわっとした。
まさか僕に笑顔を向けてきたなんて思っていない……。
「向遥、アイツと仲良くなったのか?」
涼風が僕の卵焼きを食べながら聞いてくる。悠紀人は携帯ゲームをして会話すら耳に入っていない。このおかしな感覚が何か考えながら質問の答えを探す。
「いや、仲良くはなっていないけど……」
涼風の肉巻きに箸を伸ばす。僕たちは友達ではないと思う。
アキ君は変な奴だ。
敵意剥き出しな僕に授業中笑い掛ける。怒ってるなんてまるで気がついていない。無神経で鈍感なヤツ。だからあの時もただ正直に言っただけで悪意のない言葉だったのかもしれない。それなら・・・
「多分、僕が悪いな・・・」
ポツリと呟く。
「お前が悪いな」
分かっていてもはっきり言われると認めたくないなんて天の邪鬼だけどムッとしながらあいつが悪いって言い直した。
「くそっ、負けた!」
悠紀人が携帯をしまい顔をあげ僕の顔をじっと見つめた。
「向遥どうした? 怖い顔、似合わないよ」
いつも僕はどんな顔をしているんだろう。始まったばかりの高校生活は二人のお陰で毎日が楽しく過ぎる。
だからこんな不思議な感覚は知らない。
胸の中の棘を隠したまま今日も変わらない一日が半分終わる。
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