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涼風の高過ぎる評価を聞いていたらそれなりに時間も過ぎた。
今日は考えてばかりだ、そんな事を考えながらゆっくりと特別棟へ歩き出す。
北側の少しだけ暗い廊下には誰もいなくて僕の足音が響いた。影からぴょこんと出てきた女の子の前に立つ。
「あの、来てくれてありがとう。
私、塾が同じでずっと見てたの。まさか高校が同じなんて知らなくて……。
入学式で見かけて、クラスが同じで、嬉しくて、だから、あの、好きなんです! あの良かったら・・・私と付き合って下さい!」
真っ赤な顔を下げてお願いされたとき涼風の言葉が過った。
「僕ね、同じクラスなのに君を知らなかったんだ。ごめんね、君の気持ちは僕には勿体ないよ」
「そんなことない、これから知っていってくれたらいいから!」
「ごめんね。お試しとか、したくないんだ」
顔を上げて大きな目で真剣に見つめられる。
「ごめんね」
潤む瞳から涙が溢れないように親指で拭い、女の子の横を通り過ぎた。
階段を下りようとしたとき肩に手を置かれ振り向く。
「あーぁ、可哀想に・・・」
ニヤッと笑う顔はただ面白がっているだけで言葉とはとても不釣り合いだ。
「聞いてたなんて悪趣味な奴」
「どんくさくてもモテるんだな」
何でこいつの言葉は僕をイライラさせるんだろう。同じ高さの目をキッと睨むと余計可笑しそうに笑った。
「僕、急いでるから!」
逃げるように正門へ向かいそのままスポーツ用品店へ行く。
入り口すぐにあるジャージなど衣類を無視し、靴、テニス、野球、サッカー用品を通り過ぎバスケットボールエリアを目指す。
千円の安いボールを手に取りそのまま会計へ向かう。なんでこんなことでイライラするんだろう。
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