プロローグ

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ジャラジャラと部屋に音が響いている。 鎖はとてもではないが切ることは出来なかった。必死になって外そうとしたのだが、手錠が手首に食い込むだけだった。扉を調べることは不可能だ。 そもそも、扉にはドアノブの類が見当たらない。本当にドアなのかすら確認できてない。 自分の姿を確認した。ジーンズと英字がプリントされた黒いTシャツ。自分の私服だった。 いつもはめてる腕時計などはなくなっている。 「大丈夫?」 小さな声が聞こえた。ロングヘアーの若い女性が、小学生ほどの女の子を抱きしめていた。彼女はもう一人の女性のように取り乱したりはしなかったが、ずっと体を震わせ続けていた。 部屋にはトランク状の箱が積み上げられている。まだ誰もそれには触れていない。不自然に存在をアピールしているそれは、何か妙な不安をかきたてた。 また、部屋の壁に丸いアナログ時計が一つ掛かっていた。しかし、それは十二時を指したまま動いていない。見ているうちにおかしなことにも気付いた。その時計は、針が一本しかなかった。
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