Split Game

プロローグ

最後の明瞭な記憶は高等部の校舎の屋上だった。

校庭で走り回る運動部の姿。チャイムの音。湿っぽい風。

現在の立花夕弦の思考は、ドロドロに解けたチョコレートのように混濁していた。

とても息苦しかった。口の中がパリパリに乾いている。頭が異常にズキズキする。手錠が食い込む左手首に汗を掻いていた。

閉ざされた部屋。鎖と手錠。トランクの山。薄暗く湿った空間。淀んだ空気。鎖に繋がれ閉じ込められた男女。

立花は部屋の中央に座り、その光景を目に映した。状況は全く把握できなかった。

なぜこんな場所に居るのだ？

薄暗い空間の中、同じようにぺたんと床に座る十人前後の若い男女の姿がある。虚ろな視線で空に視線をさ迷わせている彼らは、誰も言葉を発していない。同じく状況を把握できていないのか、ただぼんやりと座っている。隣で膝を抱えて座る少女の姿も見えた。小学生ほどだろう彼女は、この空間から自らを遮断するかのようにきつく目を閉じていた。

聞こえるのは息遣いだけだった。薄暗い部屋に窓はない。正面の壁に大きな扉が二つ設置されているのが見えた。左手の壁際には黒い物が積んである。トランク形状の箱が―十一個。

室内の人数も数えてみる。十人。自分自身を含めて十一人だった。三人の女に八人の男。十一人は鎖に繋がれた状態で座っていた。部屋の中心に円を書くように十一人が並んでいる。左手首を締め付ける鉄の輪は、床に食い込むフックと鎖でつながっていた。