プロローグ

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「要するに誰もここが何処だか分からない」 男の声。 混乱は不自然収束していた。部屋の十一人は、部屋の中央で寄り添うように座っている。腕を繋ぐ鎖が外れないのだ。鎖が擦れる音と呼吸音だけが耳障りに響いていた。 「まずは脱出することだよ。ここがどこだかは、その後考えよう」 声を出したものは、先ほど上坂と名乗った、ひょろりと背の高い男だ。見た感じ大学生ほど。 立花は、部屋の天井からぶら下がっている物に視線をやった。首を吊っている人間。誰も触れないが、あれがあるだけで、強烈な圧迫感と息苦しさを感じる。立花は必死で、ただ心を落ち着かせた。 部屋を確認する。学校の教室よりも狭い程度、五メートル程の正方形。天井も同じくらいの高さだろうか。要するにキューブ状の箱に閉じ込められている。そんな殺風景な部屋は、がらんとした自分の部屋を連想させた。 扉のようなものが二つほどある。先ほどパニックになった女が必死で扉に駆け寄ろうとしたが、あっけなく鎖に引き戻された。床と左手首を繋ぐ鎖の長さは一メートルほどしかない。その女は現在膝を抱えて座っている。 部屋に居る人数は十一人だった。立花は人数を何回も確認していた。何回数えても、もっと人が居る気がしたのだ。そして何度も背後を振り返った。背中に誰かが居る気がしてならない。
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