悲鳴 K タオル

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「これが荒垣先生の次作のタイトルなんだけど」と、新見は1枚のメモを板谷に向けた。そのメモを板谷は読み上げた。「悲鳴 K タオル? ……意味不明」 「俺もそう思う。だけど荒垣先生っつったらミステリーの巨匠。ミステリーっぽいタイトルって考えたらこういうのもあり――」 「いやいや。確かに荒垣先生はミステリーの巨匠だけど、これまでこんな意味不明のタイトルはなかっただろう。それに、タイトルにアルファベットを入れたこともなかったはずだ。カタカナを入れるのも珍しい。基本、ひらがなと漢字でタイトルつける人だから」 「そう言われてもなー、俺はこのメモ渡されて、このタイトルの資料集めとけって言われたわけだし」 「メモを渡された? 荒垣先生にか?」 「いんや。バイトの多田(おおた)君。今日の午前中、俺がちょうど席を外してたときに荒垣先生から電話があって、その電話を多田君が取って、それでこのメモ」 「……電話して確認した方が良くないか、多田君に」 「なして?」 「いや、多田君ってミス結構あるし。いままでにないタイプのタイトルってのがちょっと、いや大分、引っかかるから」 「あー、それは大丈夫。前回ミスしたときに俺、がっつり怒ったから。少なくとも俺の仕事にかかわることでは、多田君、ミスをしないはず」  いつも思うけど、その自信はどこから来る。と、板谷は思った。ちなみに、新見のその根拠不明の自信については荒垣公己の前担当者も心配していたところで、心配していたと言えば、新見のめんどくさがりも心配していて、だからこそバトンタッチの際、荒垣公己は書くことは緻密だが、口頭で言うことには足りないところが多いから、面倒でも一々ちゃんと確認するようにと、何度も新見に注意していた。なお、新見はその注意に了解を返していたが、いまのところ実行率はかなり低い。  そのことを板谷は知っていた。加えて新見のこの、例の根拠不明の妙な自信。何だかとても不安になった。
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