悲鳴 K タオル

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「あー、もうこんな時間かー。後はタオルのこと少し調べてー、それを明日、荒垣先生のとこに行くときに持ってく。で、足りないって言われたら、すぐに用意しますってことで、いいよなー」  椅子の背もたれにもたれかかり、大きく伸びをした新見はそうひとり言を言った。そのときである。 「あら? まだ残ってたの?」と、編集部に入ってきた人物が言った。 「あれ、桜田(さくらだ)さん。忘れ物ですか?」  板谷のその問いかけに、3年先輩である桜田美也子(みやこ)は「そう」と答えた。 「あら? そのメモって多田君?」  桜田のデスクは2人のデスクのちょうど後ろになり、そこに忘れ物を取りに来た桜田は、新見が先ほど板谷に見せたメモに目をとめてそう尋ねた。 「そうです」と新見は答えた。すると桜田は困ったような表情をして、「直らないわねー、多田君」と。 「直らない?」そう尋ねたのは板谷である。桜田は頷いて、「多田君ね、〔に〕の書き方が普通と違うのよ。〔に〕の右の〔こ〕の部分って、左から右、左から右で書くでしょ? ところが多田君って、分けないで一気に書くのよ。右から書き始めてぐるっと回すように書くの。だから〔に〕が〔K〕に見えちゃうのよね」 「つまり」と板谷は言うとメモを見て、「これは本当は、悲鳴 に タオル?」  板谷のその言葉から時間は流れ、忘れ物を見つけた桜田は編集部からすでに姿を消していた。  突然、板谷がハッとした顔をした。そして、タオルのことをネットで調べていた新見に顔を向けると、「新見、違うかもしれないぞ」 「何が?」 と新見は尋ねた。板谷は何も書いていないメモを1枚出して、そのメモに〔ひめい に たおる〕と書いた。
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