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その日から僕は毎日その橋に通い、彼女に話しかけた。僕の話に笑い、相槌をうつ。随分仲良くはなれたと思う。しかしいつまでたっても彼女の色は見えなかった。それとは裏腹に、僕の声のピンク色は鮮やかさを増す一方だった。
ある日いつものように橋で話していると、彼女はもうここには来られないと言った。
どうやら引っ越してしまうらしい。
彼女は「またいつか会えるといいね」と無色透明の声で言った。
彼女は僕に背を向け、歩き出す。
結局僕は最後まで彼女の色を見ることが出来なかった。
「いつの日か、心を許しその色を見せることができる人に、彼女が出会えますように」と密かに思ったあとで、余計なお世話か、と苦笑した。
遠くなる彼女の背中に向かって「またね」と小さく言った僕の声は、ピンク色と水色がごちゃまぜになった変な色をしていた。
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