届かぬ叫び

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マットを敷いてから1週間、平穏な日々が続いた。 木暮静子は、実家から届いた林檎をおすそ分けしてくれたり、会うととても親切だった。 天井を突くという陰湿なことをする人にはとても見えない。 騒音さえなければ問題ないということなのか。 転勤してから敏史の仕事は忙しく、帰りが深夜になる日が続いていた。 気をつけていても、慶一が起きてしまうことも多々あった。 慶一は、マットを敷いて以来床をトントンする遊びをしなくなったが 今度は配線に興味を持ちだしたようで 気付くとテレビの線を抜いてしまうことがよくあった。 「これも何か対策したほうがいいんかな~、コンセントまとめるプラグとかつけよか」 そう話していた矢先、テレビが消えた。 慶一がすべて抜いてしまったのだ。 「あ~あ…これ、どこに何が刺さってたかわかれへんわ。敏史、直してくれへん?」 疲れた顔で敏史がテレビに手をかけると 「うわぁ…!」 ガシャーン! テレビごと床に落としてしまった。 「…わ!いける?割れてない?」 幸いテレビは壊れていなかったが 深夜0時 足音どころの騒音ではない。 「…絶対起こしてもーたよな?  明日木暮さんに謝っとくわ。。」 そう話していると ━━ピンポーン━━ インターフォンが鳴り 奈穂子と敏史は凍りついた。
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