第1章

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世の中には「不幸中の幸い」という言葉がある。 事故に巻き込まれるが無事だったりとか、詐欺にあうもお金がある程度戻ってきたりだとか。 そもそもその幸いすら不幸あってのものなのだが、それにさらに不幸を重ねてくるあたり、神様は尋常ではなく性格がよろしくないらしい。 「ナゴムー!足疲れた!」 「だからそっちの名前で呼ぶなって言ってんだろ。セドって呼べ、セドって。」 僕の名を呼んだこいつ、ファルはかつて僕を殺し、僕に殺された渚が転生した、双子の弟だ。 なんで殺しあった相手と血まで繋がるんだよ。 血で血を洗ったからか。 もうやらないからこいつとの縁を切ってくれ。 「いいじゃんよ、どっちも僕らの名前なんだからさ。」 「よくない。並木和は死んだ。死んだ奴に縛られてたまるかよ。」 「ふーん、僕は縛られてもいいと思うんだけどなあ。せっかく命を掴んだんだから、楽しまないと。」 「僕はお前ほど単純じゃない。口を出すな、ファル。」 「僕だって僕なりに考えてるのに、なんて言い様だい。そんなんだから僕みたいなのに前世で殺々されちゃったんだよ?」 ああ、こいつがいなければ僕の異世界転生ライフはどれだけ有意義だったんだろうか。 今からでもこいつ殺しとこうかな。 あー、ストレス貯まる。
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