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あふれ出た血が、唇の端から、こぼれ落ちるのと同時に、閉じたまぶたの隙間からは、一筋の涙がつたい落ちる。
遠い遠い、遥か昔の記憶…
だけど永遠に忘れられない想い…
胸の中でそれを抱きしめると、例えようのない快楽が、体の奥底から湧き上がってきて、全身を駆け巡る。
自分の中のマグマが暴発して吹きあがる。
思わず声が漏れて…
これ以上はヤバいと思って、私は首筋から唇を外してた。
相手はもう、息をしていない。
力なく、のしかかってくる、その体の下から、私はモソモソ抜け出した。
気だるさを全身に感じ、床の上に倒れ込んでしまう。
荒い息を吐きながら、朦朧とする意識の中で、もう一度、あの姿に会いたいと願う。
幻のままでいいから、抱きしめて欲しいと…
そんな、恍惚の余韻に浸ってたせいで
『お前が、やったのか?女狐』
声をかけられるまで、背後の気配に気づかなかった。
振り向いた瞬間、暗闇の中に冷たい閃光を見た。
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