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少し、心臓が早くなった。
らしくもなくドキドキする。
愛の言葉は照れ臭くていえないけれど、想いは隠すことなく伝えたい。
吉岡は指先で、見事な花を咲かせる。
一筆、一筆、自らの想いをその指先に籠めて。
自分は、種から長い月日をかけて、花を咲かせる。
毎日、水を与え、想いを育てるように、その成長を見守るだろう。
きっと同じことなんだ。
願いはひとつだけ。
その想いが届くように、この想いが余すことなく伝わるように。
大切な人を思い浮かべて・・・・。
後ろから聞こえる足音。
それを感じて、小さく笑みを零した。
きっと、真人は気づいただろう。
自分が伝えたかったこと。
自分がいつも思っている、言葉を。
ゆっくりと足音が近づいてくる。
それに合わせて歩調を緩めた。
振り返ればきっと、真人の笑顔が見れるだろう。
しあわせそうに微笑む、自分が大好きな真人の笑顔が。
自分もいま、しあわせそうに笑ってる。
少しずつ近づいてくるその足音を感じるだけで、胸が熱くなる。
言葉はなくても、その想いはちゃんと伝わってくるから。
もう気づいているんだろう?
自分がすごくしあわせだってこと。
いまも、未来もきっと、真人がいるだけでしあわせだってこと。
すぐ真後ろで足音が止まった。
背中から伝わる熱を感じ、顔が綻ぶ。
赤いアネモネの花と、真人の笑顔を思って・・・・。
ゆっくりと振り返った。
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