アネモネの想い

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「なんだよ、みんなちゃんと書いてないの?俺だけじゃん、真面目に書いたの」  自分たちのやり取りに、悟が不服そうに口を挟んだ。 「なに、悟はなんて書いたの?」 「進学!母ちゃんが男は学歴も大切だっていうからさー」 「まあ、たしかにな」  なるほど、と納得する祐一郎に、悟は偉そうに胸を張る。 「まあ、おまえはあと四年くらいは勉強したほうがいいわな。彩華さん正解」 「どーゆー意味だよ!」 「そのまんまだろ。せめて一般常識くらいは学んどけ?」 「なんだよそれ!」  ギャーギャーと騒ぐ悟を払い除けながら、「未定」で終わらせている自分がなにをいってるんだか、と苦笑を洩らした。  彩華の助言だろうと、そのへんを考えている悟のほうがまだエライ。  自分たちの一歩先を歩いていた祐一郎が、廊下の角を曲がった瞬間、立ち止まって首を傾げた。 「あれ?なにしてんだ?」  そんな呟きに、祐一郎の後ろからその視線の先に眼をやった。  金髪の男が智紘の身体に覆いかぶさるように立っている姿が眼に入り、おもわず眉を寄せた。 「あれ、吉岡じゃん」  いつの間にか自分の脇からひょっこりと顔を出していた悟が、その光景を見ていった。 「・・・・吉岡?」 「うん、G組の吉岡だよ。ホラ、講堂に飾ってある絵あるじゃん?あれ描いたの吉岡だよ」  その絵ならたしかに見覚えがあるが、だからといって描いた人物の名前まで確認したことはない。  というか、いまはそんなことよりあの状態がなんなのか、ってことのほうが重要だ。 「でも、智紘って吉岡と友だちだったっけ?」  悟のそんな疑問に、この中で一番智紘とつきあいの長い祐一郎は、うーん、と首を捻った。 「さあ・・・・訊いたことないけど」  自分たちが籍を置いているのはC組。  当然のことながらG組とは離れすぎていて接点などない。  あんまり人づき合いをしない智紘が、そんな遠いクラスに知り合いがいるとは思えないし、 それにあんな派手な男が智紘の周囲にいたなら、自分が知らないはずがない。  眉間に皺が寄った自分を見て、祐一郎が苦笑を洩らしながら、もう一度智紘のほうを見た。
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