アネモネの想い

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「だからさ~~、たのむよ、都築!一生のお願い!!」 「ちょっと、吉岡、落ち着いてよ・・・・」  昼休みということもあって、校内は賑やかだ。  それでも、それ以上にこの男の声はデカイ。  道行く生徒たちの好奇な視線に晒されて、なぜこんなことになっているんだろう、とおもわずため息が洩れた。 「なあ!訊いてんの?都築!」 「・・・・訊いてるよ。訊いてるから、声のトーン下げて・・・・」  呆れ顔でため息を吐いた自分を見て、吉岡は白い歯を見せてにかりと笑った。  ことの始まりはつい数分前。  職員室での用事を済ませ教室へと戻る途中、突然後ろから腕を掴まれた。  驚いて振り返ると、見事なまでの金髪と耳や鼻にシルバーのピアスをいくつもつけた、 おおよそ文科系の部活には相応しくないと思われる装いの美術部員、吉岡が立っていた。  そして、その口から吐かれたセリフが、「俺のモデルになって!」だった。 「で?やってくれる?もちろん、やってくれるよな!?」 「ちょっと待ってよ・・・・」 「待てないよ!俺いますぐにでも描きたいんだから!」 「いや、そうじゃなくて」 「なに?」 「なんで、俺なの?」 「なにが?」 「だから、そのモデルって・・・・」  その問いに、一瞬眼を瞬かせた吉岡は、すぐににこにこしながら「そりゃもちろん」と自信満々に胸を張った。 「都築が美人だから」  なにがもちろんなのかさっぱりわからない。  美人をモデルにしたいなら、男の自分より女の美人のほうがよっぽど絵になると思うけれど。  呆れ顔でため息を吐いてみても、吉岡は顔色ひとつ変えずにこにこと笑っている。  ちなみに、吉岡と自分はまったくといっていいほど接点がない。  会話をしたのも今日が初めてだ。  それでも、自分はこの吉岡という男を知らなかったわけではない。
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