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「アイツはホント純粋で真っ直ぐなんだ。意地っ張りなとこは昔から全然変わんないんだけどね」
「真実って言葉が似合うと思ったよ」
「だろ?俺にとって白ってすごく純粋な色なんだ。特別な色なんだよ」
眩しそうに吉岡が眼を細める。
白いアネモネの穢れない輝きは、吉岡の特別な想いが籠められているからだろう。
「都築は、講堂の向日葵の絵、見たことある?」
「うん」
ステンドグラスの輝きに照らされて、凛々しく咲き誇る向日葵の絵を思い出す。
一途なまでに真っ直ぐに、太陽の光を洩らすことなく受け止めようとしているその立ち姿は、とても美しかった。
「あの絵、本当は『光』って題名だったんだよ」
「え?」
その言葉に首を傾げると、吉岡はフフと可笑しそうに小さく笑った。
「あの向日葵は俺なの。でも、本当に重視したかったのは太陽の光だったんだ」
「もしかして、その光が・・・・」
「そ、アイツ」
そうだったんだ、とおもわず感嘆の息を洩らした。
眩しすぎるほどの太陽の光。
それを必死で受け止めようとしている向日葵の花。
見ているだけで眼を細めてしまいそうになる、その輝きの意味は、そういうことだったんだ、と思った。
「顧問が『光』って題名だと向日葵が死んでしまうとか意味わかんないことで煩いから、 ヤケクソで『ヒマワリ』って題名にしたんだ。 あの絵の本当の意味を理解しようともしないクセにケチつけるから腹立って、あの絵を眼の前で叩き割ってやろうかと思った」
まあ、思い止まったんだけど、と愉快そうに笑った。
誰をも魅了する吉岡の絵。
籠められている想いが深いからこそ、その絵が輝くを増し、誰もが眼を奪われるんだろう。
向日葵も然り、アネモネも。
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