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ふわりと風が吹いた。
吉岡の金髪が風に揺れる。
髪をかきあげながら空を見上げると、さっきまで空を覆っていた雲は風に流されたのか遥か遠くに見えた。
風の吹く音だけが響く空間の中で、突然、扉がバタンと音を立てた。
振り返った先に見えたのは、ゼエゼエと息を切らしている三宅の姿。
そして次の瞬間には、吉岡が「イテッ!!」と大きな声を上げて頭を抱えていた。
「おまえは・・・・ッ!なんでそう昔ッからややこしいことばっかするんだよ!」
三宅が肩で息をしながら、真っ赤な顔で怒鳴る。
悔しそうに唇を噛みしめて、拳をきつく握り締めている。
吉岡は「痛い・・・・」と呟きながら、投げつけられたものを手にとって眼を見開いた。
「花からのメッセージ」・・・・吉岡にも見覚えのある本だろう。
ハッと、なにかに気づいたかのように自分を見上げた吉岡にそっと微笑んで、ゆっくりと三宅に視線を向けた。
「おまえがなに考えてんだかさっぱりわかんねーって、前にいったじゃんか!なのに・・・・ッ、 こんな回りくどいことばっかしやがって・・・・ッ!」
「・・・・良太?」
「・・・・っ!」
潤んだ瞳から、ぼたぼたと大粒の涙が零れる。
唇を噛みしめて、ギュッと瞑った眼からさらに涙が零れ、三宅は震えた拳で乱暴に眼を拭った。
「え、ちょ、良太!」
慌てて立ち上がった吉岡が、自分の横を通り抜けていく。
これ以上見ているのは、あまりにも無粋だろう。
置き去りにされた本を拾い上げ、軽く埃を払った。
「そんな泣くことないじゃん・・・・」
「うるせーよ!」
そんなやり取りに苦笑を洩らして、二人の横を通り過ぎて扉に手をかけた。
「あ、ちょっ・・・・都築!」
出ていこうとする自分に気づいたのか、吉岡が三宅の肩を抱いたまま顔を上げた。
そんな吉岡にヒラヒラと手を振って、重い扉を開けた。
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