アネモネの想い

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 なんの根拠があるのかわからないけど、吉岡には自信があるらしい。  困ったように小さく首を傾げると、吉岡は屈託なく笑った。  派手で近寄りがたい印象があるけど、なかなか愛想はいい。  なんでも「いいよ」と、いってしまいたくなる笑顔は悟と近いものを感じるけど、 このままあっさり頷くわけにもいかないわけで。  周囲の視線は痛いけど、眼の前の男はどうやら自分を解放する気はないらしい。  まいったな、と心の中で呟いて、壁に身体を預け腕組みをした。  そろそろ昼休み終了のベルが鳴り響くはず。  とりあえずそのときを待つしかなさそうだ、と諦めにも似たため息を吐いて、廊下の天井を仰いだ。
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