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「おまえに聞いただけじゃ、まだまだ情報が足りないんでね」
「あー、もしかして智紘の嫌いなモノでも探してるわけ?」
「嫌いなモノだけじゃなくて、全部」
「全部って・・・・」
「食べ物だけに限らず、すべてにおいて。好きなモノも嫌いなモノも全部な」
「は・・・・」
一瞬呆気に取られた祐一郎ににやりといた笑って見せると、祐一郎は首を捻りながら大きな息を吐いた。
「相変わらずスバラシイ独占欲で」
バカにされているのか呆れているのか、微妙なラインではあるけど、まあ、祐一郎のいうことは正しかったりする。
食べ物の好みを知ろうと思ったのは、不本意ながらそれが自分の得意分野だったから。
自分の味を智紘の口に馴染ませるっていう目的もあったりするわけだけど。
「まあ、狙いはいいかもしれないけど、俺が思うに、アイツにとっては食べ物が一番難関のような気がする・・・・」
「ああ、俺もそう思う」
食に関心の薄い智紘は、文字通り食べられればなんでもいいタイプだ。
それでも、自分の手料理はいつも、おいしい、といって残さず食べてくれる。
まあ、それだけでも自分にとっては効果があったような気がしているけれど。
「で、好き嫌いわかった?」
「いや、全然」
「やっぱりな」
出せばなんでも食べてくれるから、なにが嫌いなのかはさっぱりわからない。
食べられないほど嫌いなものはないってことはわかったけど、ジャンルにも拘りがないらしい。
「アイツの好き嫌いって、気分次第だよ」
冷たい緑茶の缶を額に当てながら、祐一郎が笑った。
「その場の雰囲気や気分で食べ物の好みが変わるんだよ。だから、おまえと食べる料理に嫌いなものなんてないんじゃない?」
当たり前のようにそういわれ、さすがに一瞬、考えた。
それはすごく智紘っぽい。
そんなことにも気づかないなんて、自分はまだまだってことか、とおもわず小さく肩を竦めると、 祐一郎は愉快そうににやりと笑った。
「おまえもまだまだだな」
「・・・・仰るとおり」
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