一 プロローグという名のご挨拶

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 虫食いだらけの格子戸の穴から、バナナのお尻みたいな鼻先だけをにゅっと出すと。  そこに、冬が来ていた。 「ねぇ、神様」  後ろ頭のもっと後ろのほうに、言葉を投げかける。 「冬って、どこから来るの?」  吸い込んだ空気はキンと冷えていて、鼻の穴の壁をじんと痛ませる。  逆に、漏れていく息はふわりと白く、温かい。  背後で、髪の毛をわしわしとかきむしる音が耳に入ったかと思うと、ぶっきらぼうな寝ぼけ声が聴こえてきた。 「……あっちだよ、あっち。北のほう」  見なくてもわかる。  きっと、適当な方角を指で指し示しているんだろう。
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