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いつの間にやってきたのか、まったく気がつかなかった。
ボクがその視線に反応したのは、あんまり暇で、自分のぼんわりとした尻尾を追いかけ続けて、百五十周くらいした頃。
社の前面の格子戸にへばりつく、背の低い影。
大きな瞳が、虫食い穴からきょろりとこちらをうかがっている。
ボクと目が合うと、
「おっきなワンワン!」
――――――へ?
ボクは、大きく首だけを曲げて、慌てて自分の後ろを確認する。
神様の様子を確認する。
なぜかって、ボクの姿はふだん、人間には見えないはずだからだ。
見えてしまうと、いろいろ困ることも出てくるということで、必要な時だけ神様が空間をコントロールして、それではじめて実体として現世に現れることができる。
けれど。
当の神様は、あいかわらず高いびき。
水飴みたいなヨダレを口元から垂らしている。
訪れる人がめっきり減った現在では、その一日をもっぱら寝て過ごしている神様だけど、異常事態にすぐ対応できるだけの備えはしていて欲しいと切に思う。
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