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「呼んだね」
「……咄嗟に出たんだよ」
悪いか、とむくれるこいつは本当に高校生男子なのか。なんだこの甘酸っぱい反応は。不覚にもときめいてしまった自分の乙女な思考回路を呪う。何でもフィルターをかけてしまうのは、私がそういう感情を抱いてしまったせいだろう。
それより、と三木が早口で言う。話題を変えたいらしい。
「お前の悲鳴、面白いな」
「…………?」
予想外の言葉に絶句する。
「へなちょこみたいな、腹に力入ってない声でさ。俺と一緒にたくさん悲鳴聞いただろうに、全然強くないの」
「非常時に悲鳴のクオリティなんか考える余裕ないっての!」
「にしても面白い悲鳴だった!」
ゲラゲラと笑うこの男が一転、憎らしく思えてきた。まさか自分の悲鳴まで品評される日が来ようとは。腕引っ張って道連れにしてやろうかと思った。
「なあ」
ひとしきり笑ったあと、視線を逸らして三木が言う。
「誰もいないときでいいからさ……名前、呼んでくれるか」
こんな糖度の高いセリフを聞いて絶叫しないわけがない。
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