酩酊シャウト

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『やめろ、来るな……来るなあああああッ!!』  遮光カーテンで閉ざされた世界。真っ暗闇に漂う淀んだ空気。そういえば最後に換気したのは何時間前だったかと、ぼんやり考える。目に痛い白い光線を真正面から浴びながらも、その光にかざして腕時計を見る。文字盤が示すは午後七時。……かれこれ六時間経っていた。  外界との接触をシャットダウンしたかのようなこの世界、繰り広げられるのは絶叫をあげる男女のサバイバルゲーム。「今日はサバイバル・サスペンスと洒落こもう」と言ったのはこの世界の創造者だ。その男は、真剣な眼差しで画面を食い入るように見つめている。 「……うん」  エンドロールを最後までスキップせずに見届け、彼は満足げにリモコンに手を伸ばす。画面はメニューに戻され、先程までの緊張感ある世界は嘘みたいに瓦解した。  電気が灯る。六時間ぶりの蛍光灯の光だ。
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