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「なかなか良い悲鳴だった」
彼は久方ぶりの光に動揺することもなく、深々と頷いている。私は映画館から外に出てきたみたいな光量の多さに戸惑っているというのに。実際、ここは仮の映画館みたいなものだし。間違ってはいない。こんなに上等な遮光カーテンをお年玉で買うとは、高校生としてその用途はいいのか。
「な、水瀬もそう思うだろ?」
「あー……まあ、ね」
私――水瀬由依(みなせゆい)のことを名字で呼ぶにも関わらず馴れ馴れしい接し方をする男。ちぐはぐな距離感を自覚していないこの男は、困ったことに私の腐れ縁である。幼馴染、っていう言葉もあるけど高校に入ってからは使わなくなっていた。
そいつは今日も学校が休みなのをいいことに、私を家に招いて「映画鑑賞」をしていた。
「六時間殺し合いっていうのは、さすがに具合悪くなるけど」
「あれ、水瀬怖いの苦手だった?」
「ホラーはいいけど、グロいのはあんまり……」
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