第1章

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 目的地は、優樹がバイクで世話になっているオートショップ〈スティル・ウイング〉オーナー、緒永冬也の実家が経営する貸別荘である。  学生達の溜まり場になっている写真部で話を切り出したところ、親しく付き合っている何人かが参加を希望し、この春卒業した先輩を含む男子七名、女子四名の旅行となった。  アキラの運転するステップワゴンには、遼の他に四人の男子が乗っていた。  案内がてら先頭を走る緒永冬也のバンはトランポに改造してあり、優樹のオフロードバイクが積んであったのだが……。  上信越自動車道を山間のインターチェンジで降りてすぐに、優樹はバンから愛車の二五〇CCオフロードバイクを下ろした。  山頂付近にかかる雲が風に乗って降りてくるのをサービスエリアで見た緒永が、今日は諦めろと忠告したのだが聞こうとはせず、霧で視界が悪くなったら停まって待つ事を約束して先に峠に向かったのだ。 「それにしても……こんなに視界の悪い峠道を運転することになるなら、館山から東京に抜けるまでを引き受けるんだったな。いったい、後どのくらい走ればいいのか皆目見当がつかない。霧がなければ湖が見えてくるそうだけど」  大きく溜息をついたアキラの横で、遼は地図を広げた。 「アキラ先輩が朝は苦手だって言うから、先に佐野先輩が運転してくれたんですよ?」 「まあ、そうなんだけどさぁ……何だか後ろで寝てるあいつらを見てると面白くなくて。そう言えばおまえ、ずっと起きてたのか?」 「先輩が寝てる間も起きていました、ドライブは好きですから。速度と時間からすると湖までは後十五分くらいだと思いますよ、少し前に下りになりましたから突き当たったところに見えるはずです」  房総半島の東部、館山を車で出発したのは夜が明けきらない時間だったが、途中渋滞に巻き込まれ関越自動車道から上信越自動車道に分岐した時点で既に午後二時を過ぎていた。  朝からハンドルを握っていた佐野和紀をはじめ、他の三人も長距離の移動に疲れてしまったようだ。 「優秀なナビが起きててくれて助かった」  アキラの言葉に、疲れた様子も見せず遼が笑った。
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