第1章

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「何やってんのさ。……ははん、さてはタイプなんだろ」 「んなわけねぇだろっ! あの人二十六歳だって言うし、相手になんかされねぇよ」  わかりやすい性格に、遼は笑った。  それにしてもいつの間に年齢まで聞きだしたのか? 優樹のことだ、牛乳をもらったときに単刀直入に聞いたに違いない。 「俺はもう寝るぞ、朝ロードワーク行くのに早く起きるつもりなんだ。湖の周りを一周する道が、走るのに丁度良いって聞いたからさ。おまえ、どうすんだ?」 「僕は……少し勉強してから、ここのシャワーを浴びて寝るよ。ところで真崎と忠見は?」 「あいつらなら風呂の後、轟木先輩と天体観測ドームに行ったよ。備え付けの反射望遠鏡は緒永さんの手作りなんだって。それから本棟のプレイルームでテレビゲームするとか言ってたな」  今年高校に入学したばかりで、TVゲームに余念のない二人の後輩一年生。  屈託なく、子犬のようにまとわりつく忠見遥斗。  少し斜に構えて無口な真崎宙(まさき そら)。  轟木と一緒に写真部に出入りするようになった、性格の違いすぎる二人。  どうやら遥斗は特に優樹を好いているらしく、悪い気がしないのだろう優樹も良く面倒を見ているようだ。遼も、たまに勉強を教えたりしている。 「ここの部屋割は一階の広いところが先輩達で、二階の右側が遥斗と宙。左が俺とおまえ。荷物は運んどいたから」 「ありがとう、君が寝られないと悪いからリビングで勉強するよ」  おそらくそれはないだろうと思ったが、一人の方が集中できる。 「あ、言い忘れてた。後で緒永さんが来て、先輩達に麻雀教えてくれるんだってさ」  二階への階段を上りかけて振り返った優樹の言葉に、遼は考えを変え部屋で勉強することにした。  コテージ内装と調和した木製のドアを開けると、居心地の良さそうな部屋の壁に掛けられたトールペイントが何点か目に入った。どれも高原が花をモチーフだ。  窓際のカントリー調チェストを挟んでベッドが二つ並び、入り口横には小さなライティングデスクが備え付けてあった。デスクライトを使えば優樹に迷惑をかけず勉強が出来るだろう。
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