チェックポイント①

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 オリエンテーリング開始の合図が響き渡った。  賞金を目指して走り出すチーム。楽しそうに話しながら歩き出すチーム。  そして、全く動かないチーム・メガネ。 「山田、後ろにある箱は何だ?」  佐藤の問い掛けに、山田のメガネがキラリと光る。 「これは、本日の為に用意したハンググライダーです。このオリエンテーリング、一番早くチェックポイントに着くには?」 「そうか、空路と言いたいのだな」  山田はニヤリとして、箱から出したハンググライダーを装備した。そして、近くの丘へと登り始める。 「よし、高橋! 統計学を利用して、我らの勝率を述べよ」 「お任せを」  統計学とは、バラツキのあるデータから応用数学の手法を用いて、数値上の性質や規則性、あるいは不規則性を見いだす方法。  膨大なデータを有する高橋は、小型のノートパソコンを取り出して計算を始めた。 「出ました。我々の勝率は、158%です」  ……  …… 「……158%? 聞かない数字だな」 「山田先輩が動けば、勝率は100%……そして、この山では稀に突風が吹きます。その神風に乗れば100%を超える奇跡が見られるでしょう」  佐藤は微笑み、高橋の頭を撫でた。  まだ幼さの残る高橋は、可愛らしい照れた笑顔を見せる。  その間に、山田は丘の頂上で角度を計算していた。 「この角度……そして、このタイミング……今だ!」  山田は勢いよく丘から駆け下り、最高のタイミングで宙に舞った。  優雅にして素早く、一直線にチェックポイントへと突き進む。  さらに、山田を祝福するかの如く神風が吹きつけた。  そして、遠くへと飛ばされてしまった。 「山田先輩!? そうか、突風が吹く方角を計算に入れてなかった……申し訳ございません、佐藤リーダー」  頭を下げる高橋に対し、佐藤は怒るどころか余裕を見せる。 「誰にでもミスはある。本当に必要なのは、次に活かせるかどうかだ。それに、山田は凄い男だ。あれぐらいのトラブルなど、すぐに解決して我々と合流するだろう」 「リーダー……」  メガネに後悔の涙は似合わない。  全員が山田の飛んで行った方向へと敬礼する。 「山田……またな」  山田の復帰を誰も疑わず、チーム・メガネはようやく走り出した。
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