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杉野花梨(すぎのかりん)はため息をついた。その薔薇のような唇から放たれる吐息……今日も退屈な一日が始まるのだろう。
「花梨さ~ん!」
校門をくぐると、花梨の周りに男子生徒たちが集まってきた。
ため息の原因。
「あら。おはよう」
少し冷めた表情で花梨は挨拶をする。
「おはようございます!」
男子生徒たちはいっせいに挨拶をした。
花梨はつまらなさそうに男子生徒たちから、顔を背けた。
「花梨さんカバンをお持ちしますか?」
「花梨さん今日も美しいですね!」
「花梨さん教室までご一緒させてください!」
花梨は高羽高校の二年生。情報処理科に在学している。
集まっている男子生徒たちは花梨のファンクラブの男子たちであった。
花梨は学校一番の美女である。背中まで伸びた美しい髪、モデルのように整った顔立ち、猫に似たような蒼い瞳、通った鼻筋、豊満なバスト、スラリと伸びた姿勢。
美女であった。
モデルとしてスカウトされたことも一度や二度ではない。
そんな彼女だからこそ、高羽高校の男子生徒たちはファンクラブを立ち上げた。
かわいい女子生徒が学校にいないわけではないが、花梨の美貌は群を抜いて際立っていた。
ファンクラブなど正直迷惑である。しかし、男子生徒たちも悪意があってやっているわけではない。
ため息が漏れる。
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