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「カバンぐらい自分で持つわよ」
花梨はツンとそう言った。
「さすが花梨さん! その気高いお心! 素敵~!」
この顔にへのへのもへじを書いたような男子生徒共。
憂鬱である。だが、その表情すらも美しいのだ。
「我々花梨さんファンクラブのメンバー! 教室まで花梨さんお守りします!」
六人のファンクラブの男子生徒が、花梨の周りを囲む。
「…………」
毎日のことであった。
「やや! こんなとこにガムが! 踏んでしまうとなかなか取れない!」
ファンクラブの男子生徒は地面にかがみガムを取る。
「む! こんなところに石が! 花梨さんがつまづいたら大変だ!」
「頭上に鳥が! 落下するフンに気をつけろ! 一撃で死ぬかもしれない!」
「…………」
毎日がこんな調子である。
純白の校舎と銀色の鐘がある学園。校門から校舎に続く茶色いレンガの石畳に一直線に立ち並ぶ樹木。静かな校風に憧れて高羽高校に入学したのだが。
そんな、花梨たちに次々とファンクラブの男子生徒たちが群がってくる。
「花梨さ~ん! ご機嫌いかがですか?」
「花梨さ~ん! 今日もお美しい!」
「ありがとう。でもわたしは静かなほうが好きなの」
花梨は冷たく言う。
「みんなー音を立てるな! 喋るなよ!」
花梨がそう言っただけで、ファンクラブの男子生徒たちは喋らなくなった。
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