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これまでのことや、今日の出来事を話し終えると、お姉さんは
「辛かったね」
まるで自分のことのように一緒に悲しんでくれ、そして、私を抱き締め、泣いてくれた。
人の体温はとても温かくて…、ずっと自分だけで抱え込んでいた重石が少し軽くなった気がした。
「…また母親の所に帰ると、さっきの親父も来るし、…大丈夫?」
「…そう、ですね」
あの場はお姉さんが助けてくれたから逃げられたけど、家に帰って、また小山さんが来た時、私はちゃんと一人で何とか出来るだろうか…。
…多分、力負けする気がする。
でも、そうなったら…?
今日もお姉さんがいなくて、あのままタクシーに乗せられてたら…どうなっていたのか………考えるだけでもゾッとした。
「帰りたくない…っ!!」
思わずそう口にして、ハッとする。
帰りたくないけど、どこへ行けばいいの?
バイト先の人はいい人達ばかりだけど、多分みんな実家暮らしだったり、同棲中だったりしたはず…。
それに、後半年とはいえ、高校だって行かないといけないような未成年の私を引き取ってくれる人はいないだろうし…
「…ここに来る??」
「…え?」
「やっぱりあんた…ちょっと放っておけない雰囲気なのよね。部屋は余ってるし、ここに住んでもいいよ」
耳を疑った。
そんな都合のいい話があるのだろうかと。
「いいんですか?…知らない人なのに」
「あんたの名前と年は?」
「…大塚薫。18歳です」
「OK。薫ね!私は五十川恵(イソガワ ケイ)、源氏名はメグミ。
…はい!これで知らない者同士じゃないから、問題なしね!」
「え!?」
「…まぁ、薫はまだ未成年だし、母親には私の家に来ること伝えなきゃいけないだろうけど、とりあえず薫は何も心配しなくていいから、ここに住みなさい」
「…ありがとう」
「……薫は昔の私を見ているようなの。だから、あんたが壊れてしまうなんて私が嫌…。そんな私の自己満足だから、薫は気を遣わないでいいから…ね?」
こんな優しい恵さんも苦労したんだろうか??
深い事情は聞けないけど、今は恵さんの好意に甘えよう。
「恵さん、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね!」
こうして私と恵さんの不思議な共同生活が始まることとなった。
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