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「申し訳ありません。音量を小さくするようアップデートいたします……」
再びパソコンを開くとメモリッチはディスプレイの中で小さくなっていた。
「悪質なウィルスにでも感染したかと思った」
「めっそうもございません!私メモリッチは皆様の記憶を統合し、自然な会話ができるようプログラムされた高性能AIでございます!」
「ふーん、なんでもっと可愛い見た目にしなかったんだろう」
メモリッチはシルクハットを取り落とした。しょんぼりしてしまった。
「ごめんね」
「いえ、そうした意見をもとに、私はもっとアップデートされていきますので」
メモリッチはシルクハットをかぶりなおし、ディスプレイを内側から叩く動作をした。
「ふーむ、飛び出したつもりだったのですが、ホログラム投影装置がないパソコンとはまた珍しい」
「田舎だからね」
メモリッチはなるほど、と体の一部になっている付箋にメモをした。そしてそれを破って食べた。
「忘れていました!メモリーバンクの説明をしてもよろしいですか?」
「そうだった。なんの会社なの?」
「もともとは記憶の研究をしていたのですが、新しく記憶の追体験というサービスを始めたのでございます」
「記憶の追体験……?」
メモリッチが手を振ると、周りにいろいろな動画が現れた。
「あたかもその記憶の主であるかのように、その情景を体験できます。
体験できるのは視覚と聴覚だけですがね」
私は素直に感心した。私が暢気でいる間に世界はそんなに進んでいたのか。
「ただいまお試し期間中でして、もしあなたの記憶を1日分提供していただければ、記憶を3つ選んで5分間だけ体験することができますが」
そこで、私の頭に一つの考えが浮かんだ。
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