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「で?何をすればいいの?家はちゃんと守っているわよ?」
夜魅とにらみ合っていた鏡子が、横目で柊平に訊く。
「ちゃんと過ぎるから、どうにかならないかと思って。庭に雪を降らせることは出来る?」
「できるわよ。やっていいの?」
鏡子は即答で答える。
「ダメなのか?うちだけ屋根にすら雪が積もらないなんて変だろ?」
今は夜だから構わない。
しかし、明日の朝、銀世界の街の中で一軒だけまったく雪のない建物は浮くだろう。
鏡子は少し考えたが、中庭に向かってスッと横に手を振る。
ずっと閉ざされていた木の雨戸と内側の雪見障子が、パタンパタンと軽快な音を立てて開いた。
南も東も電気をつけたままにしてあるので、中庭は上から被さる闇の中でぼんやりと浮かぶ。
鏡子の手のひらが、ひらひらと空を扇ぐように動く。
すると、ぼんやりとした中庭に、ちらりちらりと白い雪が舞い降り始めた。
「これでいい?」
「うん。ありがとう」
見上げて訊く鏡子に柊平が頷く。
ありがとうの言葉に、頑なな鏡の付喪神は照れたようにそっぽを向いた。
「よかったね柊平。これで雪見障子も活躍するよ」
「それはそこまでじゃないって言ってるだろ」
柊平と夜魅はいつもの調子で言い合う。
鏡子はその様子を、少し複雑な顔で見ていた。
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