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ゴンッ。
蘭が急に立ち上がり、忍がずっこけた。
「な、ななななな、なんで!?」
「わざとらし」
俺は忍を鼻で笑うと、忍が頬を痙攣させながら、おもいっきり睨んできた。
蘭がやっと黒田さんに駆け寄ると、戸惑いながらもゆっくりと涙を流した。
「どうして…?」
すると、彼女は肩をすくめて、いたずらっ子の笑顔を見せた。
「私がガキだったから…で、納得する?」
「納得もなにも…!」
だよな。謝られるだなんて、って思ってるよね。
「…本当にごめんなさい」
黒田さんが蘭に深々と頭を下げた。蘭もつられて一緒に頭を下げる。
蘭が下げているけど、ちょくちょく黒田さんの目を見ようと頭を少し上げる姿を見て、何だかおかしくって笑けてきた。
それにしても…よかった。うまくいって。ちょっとびびってたし。
そして、黒田さんは忍の方を向いて、頭を下げた。
「服部君も、ごめんね」
「あ、はい。うん」
忍はびっくりしすぎて、正しい返事の仕方ももちろん、立ち上がるのも忘れている。
「家永君、土井君って…」
「あそこの書斎に…だよね?」
俺は忍と蘭に尋ねると、二人は同時にうなずいた。
黒田さんが書斎の前まで行くと、一度息をついた。少し悲しそうに扉を見つめる。
「黒田さん…?」
声をかけると、黒田さんは唇を噛んで下を見た。
「失礼だったからさ…」
「大丈夫。ちゃんと言えばね」
黒田さんが扉の取っ手に手をかけた瞬間、自動ドアのように扉が開いた。
「俺の方が…悪かった」
「え、え!?」
なぜか、シャーロックが書斎の出口に立っていた。まるで、全部聞いてましたよと言わんばかりの平然とした表情で。
ふいをつかれたは、黒田さんは思わず後退りをした。
「あ、いや、その…僕の方が…ごめんなさい」
「…僕?」
黒田さんがはっとすると、しーっと口元に人差し指を当てた。
忍と蘭も目を丸くしているが、俺はその横で小さく笑ってしまった。
俺の笑い声に気づいた黒田さんが、俺の方に赤りんごのような顔でヅカヅカと近づいた。
「け…け…」
「ん?なんだよ?」
「け…圭ちゃんのばかーっ!」
いや、今回もバナナの皮、自分で踏んだだけじゃん。
でも…よかった。演技じゃない黒田さんだ。
そんな風にプンスカしている彼女を見て、ほんの少しホッとしながら苦笑いを浮かべるのだった。
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