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「やり過ぎだろ」
「それが、私なりの方法なの。浅井さん、きっと、家永君で釣らないと来ないだろうと思ってたし」
黒田さんがぺろりと舌を出した。
釣るって…俺はミミズかよ。
「だけど、告白じみた手紙はダメだろ?」
「えー?“話があるから、一人で北門に来てください。重要な話です。”の、どこが告白じみた手紙なの?」
…計画犯だ、こいつ。
二人で探偵部の前に着くと、黒田さんは目を閉じて深呼吸をした。
その表情はこわばっていて、少し話しかけづらかった。
「…ごめんなさい」
「え?」
ふとと呟いた彼女は、一瞬俺に聞かれたことを恥じるように顔を赤らめたが、すぐに悲しそうに下を向いた。
「蘭ちゃん、怒ってるかな…」
「大丈夫。蘭は…もちろん、忍も怒ってない」
てか、怒る要素がどこにあるんだよ。そう思って、俺はこっそり半笑いを浮かべた。
不器用…だな。黒田さんって。
「つーか、どちらかと言うと、黒田さんがまだ怒ってるって思ってるぜ?」
「そ、そうなの!?」
「うん。俺が黒田さんと話したことは、まだ言ってないからな」
まあ、二人っきりで話したことをみんなに言うのは、少し恥ずかしかったからなんだけどね。
黒田さんがほんの少し苦笑いすると、ドアに手をかけた。だが、すぐに手を引っ込めて、犬のようなうるうる目を俺に向けた。
「土井君…は?」
「あー、あいつ?気にしてないさ」
「本当に?」
い、犬みたいに噛みつきそうな勢いだね…
「まあ、シャーロックは少しずれてるからな」
俺は少しナルシスト風が吹きそうな表情で、彼女に向かって顔をぐいっと近づけた。
「お前に似てな!」
鼻で笑って、俺は舌をちろりと出した。
「え!?それってどういうこと!?」
「うーん…面白いこと好きなところ?」
「…絶対誉めてないでしょ?」
今回だけは、勘が鋭いんですね。
俺は「さぁ?」と、言うように首を傾げて、黒田さんの前に手を伸ばした。黒田さんが慌てて止めるのを無視して、一気にドアを開けた。
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