花輪

　近所に飲食店がオープンした。
　店の前には花輪が並んでいて、豪勢な眺めだ。
　でもその中に、どう見ても葬式用の花輪が混ざっていた。
　業者の手配間違いか。あるいは誰かの嫌がらせか。
　何にしろ、開店記念にはまるで相応しくない。
　店の人も程なく気づき、すぐにその花輪を引っ込めた。
　それから数日。その店はあっという間に閉店した。
　どうも、ご主人が事故に遭って亡くなったため、店を閉めざるを得なくなったらしい。
　その話を聞いた瞬間、オープンの際に飾られていた、葬式用の花輪のことを思い出した。
　もしやあの花は、この状況が訪れることを暗示していたのではないだろうか。
　そう思いはするものの、確証などないし、こんなことを話せば残された身内の方の反感を買うだけなので、この考えは俺の意識の中にだけ留めておくとしよう。

花輪･･･完