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視線を感じ、辺りを見回してみる。優しい風が吹いて、髪が揺れた。
「なんだろう……?」
弓道場に居るのは、浮羽だけだ。
休日に、学校に来て練習しようという物好きは、珍しいらしい。それがこの学校の校風なのか、そういう世代なのか、浮羽には判断が出来ない。
そんな孤独の中なのに、今のは間違いなく視線だった。
「なんだか、気持ち悪いな」浮羽は、眉間に皺を寄せた。
小学校、中学校、高等学校と、この容姿の所為で他人の視線を集めることが多かった。お陰で、そういった気配には敏感だ。
「一体、誰だろう。生徒かな」と、小さな顔を傾げる。それが、これまでと違い、異質だと感じたからだ。異性の躰を嘗め回すような、いやらしい視線ではない。
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