弓道女子とストーカー(1)

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 もっと、粘性が高いものだった。肉食動物が、獲物の動きを見逃さないような……。 「なんだか、気味が悪いな……」そんな不安に襲われる。独りで、弓道場に居たくなかった。 「もう帰ろうかな」と、続けて声に出してしまう。  そうやって空気を振動させることで、誰かに助けてもらえる気がしたからだ。  まず思い浮かんだのは、「図書館に調べ物に行く」と、ワカちゃんが言っていたことだった。今から行けば、会えるかもしれない。  浮羽は、弓道場の出口に向かう。  そこでもう一度、振り返ってみた。やはり、視線を感じる。  目を凝らしてみるが、その主は見当たらない。弓道場を囲む緑が、ただ目に優しいだけだった。別に、目を休めたい訳ではないのだけれど。
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